それからなんとか午後の授業を乗り切って、放課後。

仕方なく相談室へ向かうと、部屋の前に東雲が立っていた。

あたしに気づいてニッコリ微笑む。


…だからその胡散臭い笑顔、あたしには効かないんだけど。


呆れた目を向けて、あたしは歩み寄る。


「どーも、お待たせしたようで。」


「いや、こっちがヘルプ頼んだわけだしね。」


じゃあ行こっか、と東雲は歩き始めた。


「で、あたしは何をすれば良いわけ?」


どこに向かっているのかわからないまま、東雲の後に続きながらあたしは尋ねた。


「特に無いよ。ただ彼女らしい顔して、俺の隣にいてくれればいいだけ。」


…彼女らしい顔って、どんな顔だ。


「あとは適当に俺の話に合わせて?」


適当に、ねぇ。変なこと言わなきゃいいけど。


内心ツッコミを入れつつも、あたしはふんふん、と頷いた。


なんだ、それだけか。


なんとかこなせそうな仕事に、少しほっとする。


俺をかけて2人で勝負しろとか言われたらどうしようかと思ったし。


渡り廊下を抜けて階段を下り、1人目の待つ1年6組の教室の前に着いた。

東雲と目を合わせる。


よしっ、来い!!


ガラッとドアを開けて中に入る東雲に続いて、あたしも教室に入る。


「あっ、東雲く…」


教室で待っていたらしい相手の女の子が、東雲の姿を見て声をかける。

が、後に続いて入ってきたあたしを見て、はっと息を呑んだ。


「話って何かな、香川さん。」