――――ザアァァ……






遠くから流れてきた風が木々の葉を揺らし、枝葉が擦れ合う音をあたしはどこか遠くの意識で聞く。

意図的に時を止め、授業終了を告げるチャイムと同じくして教室を出てきたあたしは森を深部に向かって歩いていた。

わざわざ時を止めてまで早々に教室を出てきたのは、生徒に紛れてヴァンパイア達に"喰い"逃げさせないため……。

永遠達が来る場所は大体分かっている。

ヴァンパイアの片方はもう後が無いから、殺さなくちゃいけないかもしれない。

……また、あたしは自分の手を血で汚すのか……。

血は洗い流す事が出来ても、重ねた罪は消えてくれなくて、血濡れた十字架は足枷としてあたしを更に縛り付ける……






忘れてはいけないあたしの"罪の証"






永遠に解けることの無い"呪縛の刻印"






「……ッ」


自分の掌に視線を落とせば、一瞬血色に見えて……自分でも顔が歪むのが分かる。






「何があったのか知らぬが、そんな顔をするな……蒼」






突然耳元で囁かれた低めの落ち着いた声と鼻腔をくすぐる百合の上品な薫りに、あたしは驚くことも無く声の主を見上げた。


「白夜……」


名を呟けばあたしの右頬にそっと手が添えられる。

血色の双眸は気遣うようにあたしを伺いながらも、真っ直ぐで……。

白夜の瞳は、同じ紅でもあたしの恐れる紅とは真逆で綺麗――――……