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「……ぃ、おい!冠咲!!」


「っ!……は、あ?」


霞みかがった意識に、突然の教師の声が届いて、心臓が跳ね上がった。

蒼に向いていた瞳を、今俺の名前を呼んだ担任に向ける。

そこには眉根に皺を寄せながら、呆れたように溜め息を吐く担任の姿があった。


「お前……転校初日くらい、ちゃんと授業聞け」


まだ状況をつかみきれていない思考に、担任の声だけが耳を通り抜けていく。

さっきまでただ一点を見つめ動かずにいた教師が、いつの間にか何事も無かったかのように動いている。

静寂に包まれていた教室は、気付けば騒がしくなっていた。






なんだ……?






今のは……夢だったのか??

でも最後の蒼の言葉……、

"でも、忘れないで。あなたの一族は恨みを買いやすいわ。屋敷から出てきた以上、自らの身は護れるようにしておいたほうがいい――――……"

しっかりと耳に残る、風に流れるような透き通った声。

内容自体は突き放すようなものだったけど……。

時間が止まっていた、曖昧な最後の時に見せた蒼の表情が悲しげだった気がしてしまう。






そのせいか、俺は蒼の事を残忍な"蒼い死神"であるのだと、思いたくなくなっている――――……