ずっと遠くの、深い深い海の底にきれいなお城がありました。



人魚姫はそこで、人魚の王様と女王様と5人のお姉さまと一緒に住んでいました。



6人の人魚の姉妹の中でも、末の人魚姫は1番美しかったのです。



そして末の人魚姫は、海の上の人間の世界にとても憧れていました。



人魚は15の誕生日がくれば、海の上にあがることが許されるのです。



「陸には町があったの。明かりがたくさん灯っていて、教会の鐘が鳴り響いていたわ」



1番早く15になって海の上に浮かんだ、1番上のお姉さまは、6人の中で人間の世界のことを1番知っています。



そして他の4人のお姉さまも人魚姫にいろいろな話を聞かせてくれます。



「空というものがあるのよ。美しい茜色に染まるの。白鳥という真っ白な鳥が飛んでいたわ」



「人間の子どもたちは、みんなかわいい声で笑うの。2本の足で、水の中を泳ぎ回ることもできるのよ」



「花がたくさん咲いているわ。花は風に揺れると、甘い香りをふりまくの」



「木の枝には小鳥達がいるの。小鳥は空を飛びながら歌うのよ」



人魚姫には分からないことだらけです。