白状します。

三年前、まだ思想も自由も持ち得ていなかった私は、警察に籍を置いておりました。

そうです。

先生を思想犯として連行した特高。三年前の私はその駆け出しだったのでございます。

特別高等課では、共産主義の取り締まりだけでは止どまらず、社会活動や類似宗教、さらには人の思想までにも標的の視野を拡大させ、そして厳格な教育が徹底されておりました。

私はその場で何を思っていたか。それは、とても語れるほどのものではありません。

本当に、その時私の中には、本当に、何もなかった気がするのです。

無論、天皇陛下への忠義心はございました。

しかし、親の伝でふらりふらりとそこに籍を置いた私の忠義は、果たしてどこまでも忠義であったのか。

真の忠義を一点のみに貫いていたのか。

それには今振り返る私には、どうしても固く頷くことが出来ないのです。