――翌朝。


私は昨日事務所でもらった光変装用のウィッグと服を身に着け、事務所を訪れていた。


昨日は正面からだったけど、今日は高槻社長に教えてもらった所属タレント専用通用口から。



「「おはようございます」」


『おはようございます』


横目に素通りしようとした受付のお姉さんたちが挨拶してくれたので、笑顔でこちらも挨拶を返す。



「「…………っ」」


どうやら昨日と同じ人たちのようだと認識した途端、2つの顔が朱色に染まる。



うん?

どうしたんだろう?

風邪かな?



『どこか具合が悪いんですか?』


「いえっ!!」

「だっ……だだだ大丈夫です」


気になって近寄っていくとますます赤くなるお姉さんたち。


胸の前で両手をパタパタと振って、口では大丈夫って言ってるけど本当に大丈夫なのかな?

なにか慌ててるようにも見えるのはなぜ?


『……? 無理はしないで下さいね』


お姉さんたちの体調は気になるけど、まずい。

家でウィッグつけるのに手間取ったからそろそろ時間だ。


「はう~っ……」

「ほにゃ~……」



お姉さんたちのぼんやりとした声を背に、最上階へと向かった。