――チュン、チュン、チュン。


「んー、よく寝た~」



花誘う春。

パステルカラーの空に鮮やかに響く鳥の愛らしい声で気持ちよく目覚めた私は、ベッドの上で大きく伸びをした。

窓辺に立ち、カーテンを開けると5羽の雀が連れ立って飛んでいくのが見える。


楽しそうに先頭を翔(と)ぶ1羽。

それを慌てたように追う2羽。

そのさらに後ろから、前の3羽の様子を見守るように翔ぶ1羽。

最後尾をまだ眠いといった様子でマイペースに翔ぶ1羽。


春の柔らかな陽射しの中、何気ない日常の光景がひどく幸せで満ち足りたものに思えて、頬を弛める。


長い冬の間、ぐずぐずとした朝を過ごしていたため、こんなに気持ちよく目覚めたのは久しぶりだ。



「今日は何かいいことありそう」


なにも根拠はないけれど、何となくそう独りごちる。


後にして思えば、この一言こそその後の出来事の予兆だった。

けれどこの時の私は、それを知る由もない。



平和を絵に描いたような朝。

この朝が全てのはじまりになるなんて、思ってもみなかった。