何も聞こえなくなる。風の音も、草木のざわめきも、ぜんぶ消えてくの。

時間が止まったような、そんな感覚。

「……」

「……」

そっと唇を離して、ただただ見つめあう。真面目な顔で、じっと。

「なに?」

「んーん」

恥ずかしいのかな? 照れ隠しにムッとするところが可愛いらしい。

にんまりするあたしから離れて、篤紀はまたペットボトルに口をつけた。

日陰にいるのに暖かい。

暖かくて、ちょっとくすぐったい。

あたしは彼の肩に頭を乗せて、意味もなく笑っていた。ゆっくり流れていく時間が心地よかったの。……なのにっ。

「…………」

突然、ブルブル鳴り出した篤紀の携帯電話。開いた画面を覗き込むあたしは、一瞬で不機嫌になる。