三月二十六日、私は初めて石垣島に行った。

神戸空港を出発して石垣空港に着いたのはお昼の一時ごろだった。
その足で西表島に行く予定だった。

空港のバス停には離島桟橋に行く路線バスがちょうど待っていた。
運転手さんに聞けば、バスの四日間乗り放題の切符があると言う。

私は他の日程もバスで移動するつもりだったので、その切符の方が得だろうと思い、買うことにした。

しばらく待って、同じ飛行機から降りてきたお客さん達を乗せ、路線バスは発車した。

のんびりといろんなバス停をめぐって、桟橋の近くのバス停留所に到着した。

私はスーツケースとリュックをかついで、一番先にバスの階段を降り、連絡船の乗り場へ向かった。
しかし、私が乗船場に着いた時は西表島に行く連絡船が少し前に出たばかりで、次の便まで一時間くらい待たなければならなかった。

離島桟橋のターミナルは小さなお土産屋が数軒あるだけで、薄暗く、時間をもてあました私は、ターミナルを出て、明るい空のもと、その辺りをぶらぶらと歩くことにした。

向かいのお土産屋さんの軒先でシークワーサーのジュースを買い、それを持って隣の公園を歩く。

真昼の日差しの中に木陰を見つけた。
ベンチに腰掛けた。

芝生の緑、ぽつぽつと白いプランターに咲く赤い花。
鮮やかな色が目に染みる。

空も青くて、何もない青い所に自分の心が吸い込まれていくようだった。

ついに石垣島に着いたんだなぁ、としみじみ感じていた。

それですぐに心地よくなって、ちょっと満足して、船の出る二十分くらい前にはまた離島桟橋のターミナルへ戻った。

明るい空の下から戻った私の目には、ターミナルの出入り口はなんだか薄暗く、いくつもある扉はぴったりと閉まっていて、どれもまるで開かないかのように見えた。
どこからでも入れるのかなぁと半信半疑、そのうちの一つの扉をおずおずと開けた。
なんなく開いて私は中に入った。

入るとすぐ左手に観光案内のパンフレットなんかがたくさん並んで立てかけられている。