「おい、着いたぞ――…って、なに泣いてんだよ。」

『う…っ。うぅー…零バカぁ…。』

「は?ふざけんな。誰に言ってんのお前。」



後ろを振り向いてあたしを見下ろす零はムッと顔を顰めてピシッと泣くあたしのおでこに指を弾く。



それに痛い、とヤジを飛ばしたけど零はてんで無視で、まだ自分の腰に回ったままだったあたしの腕を解放すると自転車から降りて自転車をその場に停めた。



どうやら、ほんとに学園に着いたらしい。そしてここは駐輪場らしい。



停められた自転車に乗ったまま降りようとせずぐすぐす泣くあたしに零は「意味分かんねぇ。」と言葉を続ける。



「チャリ乗ってただけなのに泣くとこなんかねぇだろ。」

『…っある!』

「は?」

『あるのー…。』

「ねぇだろ。どんな理由だよ。」

『……髪。』

「あ?」

『せっかく、綺麗にしたのに…っ髪ボサボサー…。』



俯いていたあたしは顔を上げてうるうると潤んだ瞳を零に向けて泣いてる理由を話す。



それに零がうんざりしたような表情を浮かべたのは言うまでもなくて。



だって、いくら急いでるからって自転車のスピードむちゃくちゃ速かったんだよ?



零の腰に腕を回してるから靡く髪を押さえることなんか出来ないし(手ぇ離したら絶対落ちて死ぬ)、せっかく満足な仕上がりで可愛くキメられたのに台無しだ。