「これにより京都から貴族たちが……」

こんなのツマナライよ。
面白さのカケラも何もない……。

「それによって地方にも貴族文化が広がっていき……」

昔のわかりきった事実なんてドウデモイイ……。

「そして有名な猿楽能や産地当て遊びの闘茶などの文化が……」

何もワカラナイ……。何が起こるかワカラナイ……。

「……それで武士達の間では下剋上の風潮が広まっていったという訳だ。城島、わかったか?」

そんなスリルをワタシにクダサイ。



「……城島? 城島!」

「……え? あ……はい?」

どうやらいつの間にか説明が終わっていたらしい。

いきなり呼ぶから微妙に間の抜けた返事になってしまったじゃないか。

せっかくぼーっとしていたのに、なんで他の人じゃなくよりによって私なんだか……。全く、邪魔しないで欲しい。

「はい? じゃないわ、全く……。補習はお前だけなんだから、ぼやっとしてたら駄目だろう!」

私一人じゃなければいいのか。とも思ったが……成る程、だから私が呼ばれた訳ね。納得納得!

「納得納得!」

「は?」

あ、中途半端に声に出ていたらしい。こりゃまたやらかしましたなあ、由香殿おー!

「由香殿おー!」

「あ゛?」

……もう能内発言やめよう。無駄に危ないわ。先生もキレ気味だし。

私、城島由香(じょうしま ゆか)は霧生高校に通う2年生。まあ結構普通な女子高生。

容姿は自他共に認める童顔で、認めてはいるが正直コンプレックスだったりする。ただ悪い部類には入ってないらしいのでよかった。

頭は状況を見れば一目瞭然だとは思うが『この学校においては』残念な頭という感じ。全体で見ればもっと残念。

まあ、数学だけはテストも全国一斉模試も1位だったりするけどね。100点以外取ったことがない。凄くない?

ただ、他の教科はどれだけ頑張っても。解答欄全部埋めても0点しか取った事が無い。凄くない?

そしてそんな私に日本史を教えている可哀相な先生は原田 洋一(はらだ よういち)と言う。どうでもいいので深くは語らないが名前くらいはね!

……って、私は誰に話してるんだろ?

「私は誰に話してるんだろ?」

「いい加減黙れ」

……何、この癖。