(Ⅲ)


甘い匂いが微塵もしなくなった頃。

木しか見えなかった道筋に少し変化があった。


「あれ、ここら辺の道、タイル張りですね」


整えられた道筋。白タイルがはられており、清潔そうな雰囲気を出していた。


クロスの言ったことに、姫がそうですねぇと白タイルを踏んだ。


「城が近いのでしょう。ゴールはもうすぐだっ、というやつです」


「というやつ、の部分がよく分からないんですが」


姫の隣を歩くクロスもタイルを踏む。進む道はまっすぐらしく、迷うこともなかった。


「ミー、ミィィ」
「にぼしうまうまにゃー、ささみうまゃうまゃー」


「猫って歌を歌うんですか……」


陽気なリズムつきの翻訳をする姫に言ってみる。

姫に抱っこされている猫、本当にどこか機嫌良さそうな感じが猫から伝わってきた。