年に一度の「ホタルの集い」

近くの川沿いの道を小さな虫カゴを持って歩く。


暗くなり始めの景色に飛び交う小さな光の群れ。



「うわぁ、きれい」


感動している暇はない。


早くホタルを捕まえなくちゃ。



夏休みの宿題も絵日記もほったらかして、この日の為に練習してきたんだから。


たくさんいるホタルの中で、とびきり綺麗な光を捕まえるために。


喜ぶ恭ちゃんの顔を思い浮かべ、飛び交う光の中にジャンプする。


「紗智、見てみろよ、すっげぇいっぱい。」



ホタルと格闘する私と反対に、軽々とホタルを手に取る修。



「もう捕まえたの?」


「ほしいのか?ほら。」



修の手の中で、コウコウと光る一匹のホタル。


伸ばしそうになった手をぐっとこらえる。



「いい。自分で捕まえなきゃ意味ないもん。」


「誰のでも同じだろ?」



「駄目なの!恭ちゃんにプレゼントするんだから!」



目を丸くして私を見た修が、すぐに大笑いした。