あれからあたしはずっと考えていた。
泉サマが言う
“本気”
とやらを…。
あのときは勢いで、はいはい言っちゃったけど…本気って何よ。
本気で彼氏に成りきってくれるってことなのかな…
あたしみたいな子ども相手に…すみません。
てゆーか、今さらだけど…
泉サマって好きな女の子とかいないのかな…
聞いたことないけど…(と、いうか今まで聞こうと思ったことすらないけど)
きっと彼女とかもいたことあったんだろうな…
この間のデートもなんだか慣れてたし…
「……ひまちゃん、聞いてる?」
「ぅわっ!!!」
突然目の前の視界に奏くんの凛々しい顔が飛び込んだ。
…………やばい。
ボーっとし過ぎた。
「そんなに驚かなくても…」
「ごめん…ちょっと考えごとしてて…」
奏くんは「そう?」とだけ言うと顔をまた前に向け車を走らせる。
時刻は夜の9時。
車の窓から見えるのは高層ビルと、街の中を歩く仕事帰りのサラリーマン。
コートをしっかり羽織って寒さから身を守っている。
そっかもう12月だもんね。
最近月日の流れを速く感じる。
だって来月には映画クランクインするんだもんね。
つまり泉サマとの疑似恋愛もあと少し…
「それで、最近、泉とはどう?少しは恋する乙女の気持ち理解出来たかな?」
まるであたしの気持ちを見透かしたような奏くんの質問!