ここは、窓一つない、円卓のテーブルが置かれた会議室の様な一室…。

そこに、8人の初老の男女が、イスに座り議論を開始しようとしていた。イスに座っている初老の男女の近くには、それぞれ側近の様な、若い男女が立っており、直立不動で、事の成り行きを観察している。

「突然お呼び立てして申し訳ない。用事かつかなかった者もおる様だが、これだけの人数がこの話し合いに参加してもらった事には、感謝している」

「前置きはいい…早速議論に入ろう。私もちと気がかりな事があるしな」

「ほぅ…それは何かな?」

船頭を切って話かけた人物は、円卓のテーブルの上座に座っている、人物だ。そして、その人物に食ってかかったのが、その隣に座っている男。

日本のマナーに則れば、上座に座っている人物が、この中で一番偉い立場にあたるのだが、この口調を聞く限り、そうではない様だ。

「ガキどもの麻薬事件の事だよ。どうも、キナ臭い噂を耳にした…」

そう言うとその男性は、後ろに立たせている男に目配せをした。意図を察した男は、予め持っていた書類を初老の男性に渡す。

「未成年の麻薬事件が多数発生しており、その中の子供の証言で、ミストなる組織がある事が解った。そしてソイツ等の目的は、麻薬の密売の顧客を集める事にある様なのだが、どうも引っかかる事がある」

「…引っかかる事ですか。どうやら私とあなたは、同じ事を考えているようだ」

上座に座っている男は、そう言うと、口火を切った。

「どうやら、その組織は私達の存在を知っている様なのだよ。こんな、脅迫まがいな物も用意していた」

上座に座っている男はそう言うと、近くに居る側近に指示を出し、ここに集まっている人間に、一枚の紙を渡した。