江戸川乱歩で好きな作品はと訊かれれば、迷わず【芋虫】と答える。

では江戸川乱歩のミステリーでと訊かれれば【心理試験】と答える自分がいる。

この作品は犯人があらかじめ明らかにされている倒叙形式。

物語は秀才の学生・蕗屋が友人の下宿先の女主人を殺害しようとするところからはじまる。

女主人は六十代の未亡人で子供もなく、金貸しをして貯金を増やしていくのを唯一の楽しみとしている人物。

蕗屋はこの未亡人を殺害して金を奪おうと綿密な殺害計画を立てる。

その計画は実行され、事件後に蕗屋が容疑者として浮かび上がるのだが、確固たる証拠はなし。

事件を担当した判事は蕗屋を「心理試験」にかけることにする。

ここでいう心理試験にかけるとは、ウソ発見器にかけると思ってくれればいいだろう。

蕗屋はこの心理試験に対しても綿密な準備をして対処、担当判事をさらに困惑させる。