自分のしでかしたことに血の気が引いていく。

オレ、何呼び止めちゃってんの?

勢いで彼女の名前を呼んだことを後悔したって手遅れ。

オレの声に反応した雪村は、ゆっくりと後ろを振り返ってきた。

そんな彼女の姿に胸の鼓動が早くなる。

何だ、これ。

あーっ、くそっ。

さっき孝允があんなこと言うから、妙に意識しちゃって仕方ねぇー。

それにしても、呼び止めておいて何を言うつもりなんだ。

また明日な……とか、バイバイとか?



だぁー!!

ありきたりな言葉しか思いつかねー!!


「……雨原、くん?」


思考回路をフル回転させてもろくな言葉を思いつかなかったオレの頭は、そこで考えることを止めた。

いや、考えられなくなった。

頭が真っ白になってパニックに陥ったからだ。


なぜなら、振り向いた雪村がその勢いで目から大粒の涙を零したから。


「えっ……ちょっと!!」