待ち合わせ時間 8時5分
ただ今の時刻  8時3分




「遅れるよーっ!!」


朝の8時には不適切であろう、大音量の声が階下まで響く。




その邸の主は、口元に微笑を浮かべながら階段へと視線をむけた。


「紫苑(しおん)、送って貰うか?」




ミルクティー色の緩くウェーブがかかった髪を押さえながら階段を降りてきた、紫苑と呼ばれたその少女はフワリと笑う。




「今日はダメなの、パパ。4人と約束したのっ!!」


4人と聞いて、幼い頃からを知ってる彼らを頭に浮かべた。



――そうか、あの子たちも高校生か。





しかし、そんな少女の焦った様子など気にせずに無情にも時計の針は時刻を刻み続け、少女の周りでは、あたふたとメイドの者たちが走り回っていた。




「お嬢様!!車を手配いたしま…」


「時間ない!!走るねっ」


「お嬢様ぁぁぁ」



悲痛な声を上げながら止めるメイドを振り切り、リビングを飛び出した我が子を頼もしく眺めた。





「あ、連絡しなきゃじゃん!!」





――白河 紫苑 15歳
外交官である白河宗次郎の一人娘。