「れんげ、絶対〇〇大学に入るのよ。あの大学に行けば、一流企業に勤めれるのは確かなんだから」


見慣れたいつもの部屋、聞き慣れた母の言葉。

その娘はとくに反論もなく、はい。と応えた。


まるで自分のこてではないみたいに。



その子の名前は三隅れんげ、高校二年生。


なんやかんや自分で決めないと気が済まない母の言うことを、はいはいとそれ通りに歩いてきた普通の子。


言ってしまえば、意志を表現できない子。


毎日普通に学校に通って、普通に友達と喋って、勉強する。


そしてまた帰って勉強しての繰り返し。


大学大学っていう親の口癖のせいで、遊ぶ時間は勉強に比べたらほんの一握り。


これでは恋だってできない。




―――翌朝―――


「れんげさあ、よく遊ばずに毎日毎日勉強してられるねっ。高校受験1ヶ月前?」


朝の登校。生徒たちが慌ただしく教室へ向かうこの時間。


いつものようにげた箱で友達と会う。


〈新藤さき〉とかかれたロッカーに靴をしまった彼女は、昨日れんげが遊びに行けなかったことを毎度のようにせめてきた。


「だからぁ、私も行きたかったよ?でも親がぁ…」