「――大っきいですね。
流石は伝統ある学校」


弥嘉は、今し方到着した
帝政律館を眺めて思わず
感嘆の声を上げた。

周りの住宅街とは一線を
画する広大な地に、古き
良き時代を彷彿とさせる
荘厳な佇まいの校舎と、
見渡す限りの蒼色の森が
その風格を漂わせながら
鎮座している。


「うるせぇな」


それに対して、隣にいる
壱加は実に冷めた口調で
弥嘉を非難した。


「大体、何で俺がアンタ
の用事に付き合わなきゃ
いけねぇのか全くもって
意味不明なんだけど?」

「す……すみませんっ」


尚も暴言を吐く壱加に、
弥嘉は肩を少し竦めた。




     ***




「今日は、あともう一人
転校生が来るみたいね!!
この時期には珍しいけど
まぁ仲良くやりなさい」


20代後半位の女性に引き
連れられ、弥嘉は自分の
教室に案内された。




『えっ……な、何故?』




扉を開けるや否や弥嘉は
信じ難い光景を目の当た
りにした。