弥嘉は保健室を出るなり
寮の自室まで全力疾走で
駆けていった。

その時には既に空が陰り
湿気を含んだ風はそのよ
うな彼女を責め立てるか
の如く吹き抜けた。




部屋に着くなり、彼女は
勢い良く扉を開けて床に
散らばっている本を無造
作に手に取っていく。


『えっと……確かこの辺
にあったような?』


するとようやくお目当て
の書物が目に飛び込む。


『あっ、ありました!!』


それを見つけると弥嘉は
些か顔を綻ばせ、思わず
高く持ち上げた。


『これで、ようやく都ち
ゃんに辿り着けます』


そう思うや否や、すぐに
来た道を引き返した。




     ***




「壱加っ!!これです!!」


息を切らし顔中を汗だく
にしながら、彼女は壱加
に例の本を見せた。


「――“王侯順序”?」

「はいっ!!ようやく見つ
けることが出来ました」


怪訝な表情を見せる壱加
をよそに、弥嘉はにこや
かに答えた。