壱加の些か手荒な激励に
よって弥嘉は完全に立ち
直ることが出来た。

その後、彼女は“眼”を
発動させつついたずらに
船内を歩き回っていた。


「――睦月様、睦月様」


その様子を暫し静観して
いた壱加は、思わず溜め
息を漏らした。


「お前、まさか俺の時も
そんな阿呆みたいなこと
してたのかよ?」

「なっ!?これでも、真剣
そのものですってば!!」

「どこの世界に、人探す
のに名前ブツブツ呟きな
がらその場を歩き回る奴
がいるんだよ!?どう考え
てもおかしいだろ!?」


さも不審者を見るような
目をした壱加に対して、
弥嘉は羞恥を覚えたのか
急に俯いた。


「これでも精一杯“眼”
を使って探しているので
すけれども前回のように
断片的でも映像が入って
こないのですよ……」


それを聞いた瞬間壱加は
不気味なくらい口をつり
上げていた。


「――まさか、“眼”の
発動条件が徘徊とはな。
やっぱdragon eyesレベル
は違うわ!!……あ!!それ
とも単に弥嘉が変な奴な
だけかぁ~納得納得!!」

「ええっ!?ちょっと違い
ますよ!?何を仰っている
のですかっ!?」

「じゃあ、自分で好き好
んでこれやってんのか!?
益々危ねぇなぁ!!」

「そ……そんなわけない
じゃないですかぁ!!」


真っ赤な顔でそう叫びな
がら憤慨する弥嘉を見た
壱加は声を上げて楽しそ
うに笑った。