「お嬢様、学問のお時間です」


召使に呼ばれて部屋を移動する。

今日もまた、勉強の時間。


たくさんの本が並ぶその部屋は、本が日に焼けないようにと北側に面してる。

昼下がり。

だけど部屋は、薄暗い。



「こんにちは、お嬢様」

丁寧にお辞儀をして私を出迎える先生。

眼鏡をした、少し強面のおばあさん。


「今日も歴史の勉強を致しましょう」


私は用意されているいつもの本を開いた。


「それでは、昨日の続きから―」



お勉強は、好きじゃない。

だって、覚えられないから。


楽しくないの。

先生に教えて貰った事も、少し経ったら忘れてしまうの。


先生に褒めて欲しくて、一生懸命勉強したわ。


でも、ダメ。


暫くは覚えていても、新しい事を覚えだすと、前の事をすぐ忘れてしまう。


「歴史は途切れることなく続いています、なので、物語として覚えればよいのですよ」


見た目とは裏腹に、優しくて辛抱強い先生は、そう言って私を励ましてくれた。



そんな先生に応えたくて、必死になる私。


でもやっぱりダメ。


覚えなくちゃと思っているのに、上手く覚えられない自分を嫌っていく私がいるの。


苦しいわ、苦しい。


勉強が出来ない私が、嫌いっ―