浅木が横浜に着いたのは夕方近くだった。


藤田が言っていた桐野商会は直ぐに見つかった。


西洋風の屋敷の周囲は高い塀に囲まれていた。


ぐるりと一周すると、木の枝がいい具合に屋敷の中から飛び出している場所があった。


よく見るとその部分の塀の上には土塊がついていた。


だぶん小春はここから侵入したんだろうと思った。


ここからの侵入は警戒されていると思った。


浅木は裏口に回り、出入りの業者を観察した。


八百屋や酒屋、それだけでなく浪人も頻繁に出入りしていた。


浅木は出てきた気の弱そうな浪人が飲み屋に入るのをつけていった。


声をかけると、商会で浪人を雇っていることが分かった。


そして、来ないかと誘われた。仲間を連れてくると幾ばくかの金がもらえる様だ。


浅木は浪人を酔い潰れさせると、その浪人を抱えながら、商会の裏口から屋敷内の浪人達の雑居部屋へと入れた。