:宮比side



「……望月……。」


唯璃に呟くように呼ばれ、顔を上げた。

「…ん?」



下から見上げた唯璃は、なんともいえないような表情をしていた。






唯璃……?どうしたんだよ。






さら……────



伸びてきた唯璃の手が、俺の髪に触れた。


「っな?!唯璃?!」


驚いて声を上げると唯璃は泣きそうな顔で微笑んだ。




「望月は…、やっぱりすごいな。
 私じゃ…届かないぐらい。」







なんで…、
そんな顔して笑うんだよ…?

なんで、そんなこと言うんだよ?



さっきと雰囲気が変わった唯璃にそんなことを思った。


段々、泣きそうな表情になっていく唯璃を見ていたら、何か…、



何か、言葉をかけてあげたい。

そう思うのに…───










何一つ、浮かばないんだ。






唯璃が今、

何かに苦しんでいるのは分かっているのに。



「…ふぅ……。」


小さく、ため息が聞こえてきて、唯璃を見上げた。