村へ来て二週間目。
 僕は風邪をひいて布団の中で横になっていました。すると新しい友達が全員で揃ってお見舞いに来てくれたのです。
 みんなは不安げに僕の顔を覗き込みます。
「ヒロちゃん、てきねえんけ」
「あんな、今日は夏祭りやじゃ」
「夜中まで盆踊りじゃ。夜店のたこ焼きやりんご飴、景品を狙って射的に輪投げで大賑わい。いちごの氷水がうらの大好物なんじゃ」
「祭りの日は何時まで起きていても怒られないんやぞ」
「それに学校の体育館では子供映画大会もあるや」
「ヒロちゃんの風邪が夜までに治るといいけどのお」
「うららはおめえと一緒に行くのを楽しみにしていたのになあ」
 みんなが僕を心配してくれる事がうれしかった。
 それに村の夏祭りの事もすごく気になりました。
「ねえ、今夜の映画って何かな」
「先生が言うとったけんど、あのな…」
「絶対にしゃべったらあかんちゃ!ほれは姉さん先生との秘密。映画は来てのお楽しみじゃ」
 リーダーのゲンちゃんがトシの口を慌てて塞ぎました。
「でも、ちょこっとだけ話そうかの」
「うん。言おう、言おう」
「おめえらは本当にしょうがない奴ばかりじゃのお。ほんじゃま、ちょこっとだけな」
「うん。ゲンちゃん、たのむっちゃ」
「あんな、先生の机の横でわしが最初に映画のフィルムの箱を見つけたんじゃ」
「うん、うん。ほんで?」
「どんな映画のフィルム?」
「フィルムは外国のネズミのマンガらしい」
「うーん、それだけでは残念ながらうららになどさっぱりもって意味がわからん」
「姉さん先生は映画の題名を『ミキマスオのファンタジア』だと教えてくれたんじゃ」
「はぁ?ますますわからんちゃ。そんなもんが実際にどれほど面白いんかのお」
「わしにもわからんわい。それと毎度お馴染みの怖い映画じゃ」
「ほんまか?今年も『ミミナシホウイチ』とか『ボタンドウロウ』かの?」
「うへぇ、うらはやっぱり恐ろしいのが苦手じゃわいなあ」
「そのくせおめえはいつも一番前で見とるがいや」
「しまった、バレていたか」