きっと、あたしという人間は、欲張りなんだ。


恋も仕事も人間関係も、何もかもを頑張りすぎて、周りが見えていなかったんだ。



貞永の気持ちだってそう。

アイツが、何を考えて、何に対して悩んでいるのか、分からなかった。



いや、

分かってあげられなかった―――






「―――という訳で、只今から映画「everlasting love」の吹き替えを開始します!」




威勢のいいスタッフの声に、吹き替えにキャスティングされた人達が、ざわざわと動き始める。



貞永も、その一人。

すっかり仕事モードに入った貞永は、あたしの方に身体を向ける。




「じゃ俺、行って来るわ」



「う…うん!あたしは別の仕事があるから、終わりの時間に迎えに来るね」



「了解」




業務事項だけの会話を終わらせると、貞永は忙しそうに吹き替えブースへと入っていった。




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