スキという感情を

あたしはまだ、知らない。




「あゆ、明日仕事あるか?」



「明日は打ち合わせだけだから、早めに終わると思うよ」



「じゃ、ちいの高校入学祝いに、メシでも食いに行くか」




ビールを片手にお刺身を摘むお父さんと、その向かい側の席に座って、お父さんを見つめるお母さん。


二人は結婚十六年目だと言うのに、いつまで経ってもラブラブで、娘のあたしは半ば呆れる事しか出来ない。



だって、ホラ。




「何処にご飯食べに行くの、光輝?」



「うーん。本当はあゆを食いたい所なんだけどな」



「って、バ…バカ!ちいの目の前でそんな事言わないでよ…!」



「大丈夫だ。ちいにもそういう教育は必要だと思うから、な?」




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