一通りコボルドを倒すと、彼らは一斉に退却していった。

「パドメ!」
「! サナ」

 溜息をつくパドメに駆け寄る少年。

「大丈夫だった?」
「ええ。サナも」

 サナは左手を軽く振って、小さく笑った。

「相手がコボルドだったから、僕の魔法でもなんとかなったよ」

 サナは武器で戦う事は出来ない。魔法の素質はあるものの、武器全般が苦手なのだ。

 流浪の民には珍しいが、回復の魔法を得意とするためヒーラーとして頼りにされている。

 焦げ茶色の髪と瞳。19歳の少年はニコリと笑いかけた。

「ベリルたちも、大丈夫かな……」

 サナの言葉に、パドメは目を伏せる。

「そうね」
「集落の周りも、もっと固めないと」

 後片付けを眺めて、サナは言った。