波津家への特注書に

サラサラと字を走らせてゆく。



夕焼けに染まりゆく部屋の中は

静かだった。



仕事がひと段落終り、特注所を幸に手渡す。





「瑠璃様、あの」



幸が物言いたげに瑠璃の顔を見つめる。




「何だ」


「私に、傍人をお任せさせて頂けないでしょうか」




傍人を?

わざわざそのような面倒なことを

やりたいというのか。



「もう既に、傍人のようなものではないか」



今でも十分に私の傍にいると思うが。



「しかし・・御起床の時も御就寝の時も
千代さんがお付きになってらっしゃいますし
お髪も私には梳かせて下さりません。」