「先輩!おはようございます!」



「…なんでお前がここにいるんだよ、絢音」




ホームルーム前の三年生の教室。

あたしは登校してくる先輩を待ち構える為に、彼の席を陣取っていた。


いるはずのないあたしの存在に、先輩は小さくため息をつく。




「今日は朝から登校なんですね」



「馬鹿野郎。昼からは音楽番組の収録と雑誌の取材だよ」




あたしの名前は、向井絢音。高校一年生。


そして、先輩の名前は中森猛、あたしと二つ違いの高校三年生。



先輩が普通の高校生と違う所。


それは―――




「明日からはライブのリハだし、あんま学校来れねーよ」




先輩は、芸能人だという事。




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