「ワンダーランド・・・?」
「そうだ。そして、ここは夢の国」
何故だか部屋全体の空気が重く感じる。
アリスは少し、生唾を飲んだ。
「聞いたことが無いわね、そんな国名・・・首都名はなんて言うのかしら?あ、ここに城があるから・・・ここが首都なのかしら」
「・・・首都?お前からはおもしろい言葉がたくさん飛び出してくるな」
ハハハ、と女王は少しだけ豪快に笑う。
しかしアリスは何が可笑しいのだろう、と小首を傾げる。
「・・・何がそんなに面白いのかしら?首都くらいあるでしょう?あ、それか大統領のお名前は?」
「大統領?なんだ、それは?」
「・・・・!」
女王はアリスを不思議そうに覗き込み、美しい唇を見せる。
そっか、本当に何も知らないのね。とアリスは心の中で思う。
さすがにこればかりは口にすることができない。
最悪、そんなことを言ったら首を切られてしまうかもしれない。
「そう・・・、ならいいわ。最後にひとつだけ。夢の国とは・・・どういうこと?」
ピクリ、と女王、大臣の体が少し動いた気がした。
何かおかしなことを聞いたかしら、アリスはそう続けると、女王は
「いや。」
と返してきた。
「夢の国・・・どう説明したらいいのかのう・・・のう、そこの兵士よ」
「! あ、いや・・・・あの・・・」
兵士は口をもごもごとさせながら、俯いてしまった。
「・・・使えぬのう・・・まあよい。のう、なんと言ったらいいかのう?」
「いや、私に聞かれても・・・夢というのは、寝ている間に見る夢のこと?それとも、こうなりたい、ああなりたい、っていう願望のほうの、夢?」
「ああ・・・・どちらでもよいのだよ、お前がどう捕らえるかは自由だ」

女王はそう言うと、目を伏せ、静かに笑ってみせた。