「じゃ、整腸剤
出しておきますね」




朝、8時前に家を出て
ソファーが縦に長く並ぶ
小児科の廊下で



飽きてぐずる青波をあやし
待つこと2時間




診察室で医師は
風邪とも何とも言わず
整腸剤出しておきますね
と言った




まあ、下痢してるだけだし
熱があるわけじゃないし



何ともないから
何とも言わないわけで
ホッと一安心


自分やパパが1週間
下痢しようと、嘔吐しようと
大して心配しないけど


1歳4ヶ月の可愛い息子が
1日下痢をしたら
もう大事件だ



医師の前にある
丸い椅子に座ったまま
ひざの上の青波(セイハ)に
シャツを着せながら



「あの……先生」



意を決して口を開いた



すると医師は
デスクの上のカルテから
顔を上げ


「何か?」



医師と目が合うと
とたんにしり込みしてしまう


だけど聞かねば


「あの、下痢とは関係のない話なんですけど……」


緊張から不必要な
長い前置きをしてしまう


「はぁ、何ですか?」



ああ、どうして白衣って
威圧感たっぷりなんだろう


…………でもでも



「あのっ、うちの子
もう1歳4ヶ月なんですけど
夜泣きが全然治らないんですが」



…………言った


言ったぞ


聞きたかったことを
やっと聞いたぞ



顔が熱くて
変な汗をかいた私に
医師は しらっ と



「じゃ、睡眠薬飲ませます?」



そう言った