数日後、穂高の御両親が、店に挨拶に来た。
ご迷惑をおかけしました、と消え入りそうな声で母親が謝り、そして店を出た。
北野森は後を追い、声を掛けた。

「あの、穂高、くんの、印鑑と履歴書です。派遣会社から返却されてきたので、お渡しします」
「ああ……。どうも、すみませんでした。あなたは?」

気落ちしている母親のかわりに、穂高の父親が返事をした。

「穂高くんと同じ派遣会社の者です。仲良くさせていただいてました」
「そうでしたか。……すみませんでしたね……」
「いいえ。あの、部屋の荷物の片付けはもうお済みですか? 僕のバイトが終わったらお手伝いしますが」
「いえ、結構です。……ありがとうございました」
「あなた、ここで買い物していっていい? あの子の好きな肉じゃが作ってあげなきゃ」
「こら。……すみません、今日のところはこれで……」
「あ、はい」

子供の死を受け入れられないのだろう。
ブツブツと小さくなにかを呟いている母親の肩を抱くようにして、タクシーを拾って、穂高の両親は立ち去った。

(そうだよ……あんな殺され方されて、普通でいられるわけない)

警察の捜査はどうなっているのだろう。
監視カメラの映像を引き取りにきて、聞き込みをしていたらしいが、これといって進展しているようには見えない。