海も京も『狐狼』じゃない。

誰なんだろうか?

…ほら、また。

聞けない疑問が増えていく。

私が居るはずの不良の世界なのに、知らなくて分からない事ばっかり。

「…そうですか。」

私は曖昧に笑った。

腕時計を見たら、10時少し前だった。

その場から逃げるように立ち上がって、海の部屋に入った。

真っ暗で、壁に沿って電気のスイッチを探す。

「わっ!」

何かに躓き、転び込んだ。

あったかい…。

眠気を誘うような暖かさだった。

「…痛ぇ。」

「ごめん。」

蚊の鳴くような海の呟き声が聞こえて、私は慌てて起きる。

海のベッドに飛び込んだ訳だ。

「灯りはどこ?」

暗闇に目が慣れてきて、周りをキョロキョロと見回した。