厳重なセキュリティを潜り抜けて、バタバタと慌ただしい試作部を退出すると。



コンパスのある修平を追いかけるように、コツコツとヒール音が鳴り響く。



少し走って距離は縮まったのに、追いつく事を憚られてしまう雰囲気だ…。




ねぇ修平…、どうして今日は振り返ってもくれないの…?



いつもなら立ち止まって、必ず私を待っていてくれるのに――…




スタスタ歩く後姿から漂って来るのは、かつて無いほどの不機嫌オーラで。



反して爽やかな香りを纏った修平の心が、何も読み取れないよ・・・




A会議室に到着して立ち止まると、彼がドアノブに手を掛けてガチャリと開いた。



不機嫌なクセに此処でもジェントルマン気質からか、私の入室を眼で促すから。




「…すみません」


ダークグレイの瞳を避けるように視線を落として、ぎこちなく足を動かした。



その間も無言を貫く修平からヒシヒシと視線を感じ、ただ胸が苦しくなって。




「・・・っ」


グッと込み上げるモノを耐えようと、急いで椅子を引いて席に着く私。



その刹那、バタンと閉ざされたドアの音で重苦しさだけが蔓延する…。