奥底へ辿り着くには眼前で立ちはだかる問題が山積しているため、そう簡単にいかない。



一歩ずつ着実に進むにはとても時間が足らず、まして本来の目的を損なってしまうから。



あれから一言も発せず、開発に没頭するジョシュアの元から離れることも出来ずにいる。



とは言っても、すっかりその碧眼に植えつけられた苦手意識は増殖の一途を辿っていた。



今まで部署内や取引先での折衝は間々あっても、血の通わない眼差しは初めて接した私。



迷うより進むべし、ソレが出来なきゃ女が廃る――昔から掲げるこの心情が頼みの綱…。



それでも冷たい眼差しを思い出すだけで、ふと身震いしたくなるのはどうしようもなく。



あとでリリィにジョシュアのことを聞いてみようか、とムリヤリ感情を押し込めていた。



例の化合液は松岡さんを通じてシカゴ支社へ依頼したため、あと1時間で到着とのこと。



あの飄々とした松岡さんは試作開発だけでなく、巧みな話術のお陰で顔が広かったり…。



ただ…現状はアドバイスの口添えよりも、どう口火を切るかで躊躇っているのが本音で。



そうだと知ってか知らずか…、大きな背中は振り返りもせず機械と無言で対峙していた。



こうして本社へ訪れたことで、肌で感じたそのレベルの違いに一抹の悔しさも感じるが。



忙しく動きながら思案するその白衣姿を尻目に、修平から指示されたレジメ作成中の私。



支社のサーバーへ自身のアカウントでログインし、社外秘となるそれから文章を起こす。



それでも不足する物については、支社の情報管理部へ役員・修平の依頼と電話で告げた。



すぐにPDFやエクセルが添付されたメールが届けば、さらにそれらを加えての作業だ。



15時よりインド支社とのWEB会議を行う際、支社の資料が至急必要とされたそうで。



ちなみに修平は現在、COO(最高執行役員)とCTO(最高技術責任者)と会議中だ。