追いかける勇気もなく……



またあの日のことを後悔する。



美術室に来いって言ってくれたのに、なんで行かへんかったんやろ。




私と大雅はもう別々の道を歩いてる。


交わることのない道……



ってそんなかっこええ言い方しても全然かっこええもんじゃない。





ただ、愛想尽かされただけ。


素直になれない杏奈は、もう大雅のおもちゃにもなれない。






それから数日して、お兄ちゃんからまた新情報を聞いた。



大雅の結婚相手として有力な女の人が、お兄ちゃんの知り合いの知り合いの知り合いの彼女らしい。



これまた遠いけど。


それに、その人も彼氏おるんかいって感じ。




「お前、このままでええんか?ほんまに婚約とかしてもーたら、どうすんねん!!」


「だって、どう転んでも御曹司と私なんかつりあわへん」


「そんなこと問題ちゃうやろ。大雅は、自分が御曹司やってことを隠して、高校に通ってるんやから、普通の恋愛がしたいんや!せっかくチャンス作ったったのに、もう知らんぞ」



お兄ちゃんは、イライラした様子で私の前で貧乏揺すりをする。



「もう嫌われたもん」


「それ確認したんか?女ってそういう所あるよなぁ。マジでうざいわ~そういうのん。大雅の心の中、お前は見えてると思ってんのか?」



珍しく本気で怒ってるお兄ちゃん。


私は明日、大雅と話してみようと決意した。