無音の中に響く、堪えた声が漏れる音。

ベッドに横たわり、ジワジワと襲い来る痛みに耐えていた。

 母の心配の声も、弟の幼い笑い声も、全く耳に受け付けなかった。

ただ無駄に繰り返されるのは、同じ言葉ばかり。

 輝の心は思い切り背伸びしても、勢いをつけてジャンプをしても、届かないところにあった。


 私が彼の世話をするのには理由があった。

いつか振り向いてくれるかもしれないという、そんな淡い期待を抱いていたから。

 病気で苦しむ彼の傍にずっといれば、もしもということがあるかもしれないと思っていた。

『やっぱり歩美しかいない』

そう言ってくれることを夢見ていた私は馬鹿だ。

人の心なんてそんなに簡単に動かせるものじゃないということを、改めて痛感した。