初ゼミも回数を重ねれば要領を得て、毎回のレポートも楽にこなすことができるようになった。

 ある男子の誤字脱字は減っただろうか。

 はたまたあの女子のわかりづらい文は改善されただろうか。

 そして、ウサギは相変わらず訂正の余地が見当たらないものを書いているだろうか――。



 アリスがウサギの正体を知ったあの日から、二人の間には気まずい空気が流れている。

 アリスは意識的にウサギを見ないようにしているし、ウサギもアリスをからかうようなことはない。

 だからアリスは気付かなかった。

 ウサギの変化に……。

「有栖川さん、宇佐木くん、ちょっと良いかな」

 とある初ゼミ終了後、二人して井上教授に呼び出された。

「先月書いてもらった新型ウイルスのレポートがなかなかよくできていてね、読みたいという申し入れがたくさんあったんだよ」