ドラゴンはヴァラオムと名乗り、一夜の暖を要求した。

 つまり、1晩相手をしろ。という事だ。ベリルは仕方なく薪(まき)に火を灯す。

[酒はあるか?]
「そこまで要求するのか」

 ベリルは顔をしかめながら、酒瓶を取り出す。

[ウサギを捕まえてやったろう?]
「……」

 別に頼んだ訳でもないんだがな……ベリルは、たった今さばいているウサギを見ながら思った。

[ベリル、といったか。おまえは流浪の民だな]

「……そうだ」

 少し含んだ物言いに、ヴァラオムはピクリと眉を動かした。

 流浪の民は捨て子を育てると知っているヴァラオムは、彼の言葉を言及しなかった。