それは2年ほどの昔──ベリルが23歳の時。

 16歳で旅に出て色々な仕事をし、数々のモンスターにも出会ってきた。

 クソジジイ(長老)に呼びつけられ、戻ってみたら単なるぎっくり腰だった。

『魔女の一撃』と呼ばれるほどのものだが、そんな事で呼びつけてくれるな……

 しばらく集落に滞在し、長老に悪態をついた後、再び旅に出た。

 岩山にさしかかる。

「!」

 景色を眺めながら馬の手綱(たづな)を引いて歩いていたベリルの目の前に、ローブのフードを目深(まぶか)に被った人影が立っていた。

「……」

 ベリルはゆっくりと近付く。フードから見て取れるのは褐色の肌と銀色の髪、フードからこぼれ出ている髪の長さから、おそらく長いと見受けられる。

 金色の瞳がベリルをちらりと見た。

 とりあえず、その人物の2mほど手前で立ち止まった。

「……」

 反応が無いようなので横切ろうと足を進めようとした刹那──

「汝(なんじ)に聞きたい事がある」
「なんだ」

 ベリルはさして驚く事もなく応えた。