立て付けの悪い窓ガラス、風がカタカタと音を立てる。

 討伐隊のメンバーが集まる日まで、ベリルとセシエルは宿屋で待つ事にした。

「……」

 ベリルは1人、酒場で琥珀色の酒を傾けていた。


 風の吹く日は昔を思い出す──人々が行き交う街の中、3歳のベリルは1人ただ前を見据えて道の脇で立っていた。

 知っているのは、己の名のみ。あとは、ひどく曖昧な影だけが脳裏に浮かぶだけだ。

「?」

 ぼうっとしていると、自分をのぞき込む影。さして関心もなく、その老人を見つめる。

「……か?」

 何か言っているようだが、うつろにベリルは首を縦に振った。

 すると、老人はベリルの手を取り歩き出す。宿屋に連れられ数日、老人とそこにいた。

 4日が過ぎ、5日が過ぎ……

「……」

 老人は眉をひそめてベリルを見ると、しゃがみ込み静かに抱きしめた。