確か以前の呼び出しに応じたら、無理矢理結婚させられそうになった。

 その前は、孫が生まれたから祝えと呼び出され。

 極めつけは『畑の収穫を手伝え』と呼び戻された。

 ただの嫌がらせとしか思えない。複雑な顔をしているベリルに、セシエルは小さく溜息を漏らした。

「それだけ、お前が可愛いって事だろ」
「どうだか……」

 しかし今回の呼び出しは少々、毛色が違うようだ。

 仲間が直接、連れ戻しに来るとは……

「仕方ないな」

 ベリルは激しく『嫌だな~』という表情を全面に押し出して、深いため息を吐き出した。

「まあまあ」

 セシエルは苦笑いを返し、ベリルの背中を叩いた。

 彼らは『流浪の民』と呼ばれ、町から街、森から森へ旅をする民だ。