「ベリル! 待てよ」
「セシエル?」

 賑わいを見せる、とある街の一角。

 市場の人混みをかき分けて、1人の青年が流れに反発するように歩いていた。

 呼び止められた青年はベリルといい、金髪のショートヘアとエメラルドの瞳が印象的だ。

「お前、相変わらず足速いねぇ……」

 呼び止めた青年は息を切らせて人混みから離れた処で立ち止まる。

 彼はセシエル。シルヴァブロンドの肩までの直毛に魅力的な大きめの赤茶色の瞳。

「どうした? こんな処に」

 ベリルの言葉に、セシエルは呆れた顔をした。

「“どうした?”じゃねぇよ……お前、長老の呼び出しに応えないから俺が直接、連れ戻しに来たの」

「……」

 それに、ベリルは眉間にしわを寄せた。

 あのジジイの呼び出しに応じるとロクな事が無いのだ。