「一香も大変ね」


「…うん」



 机に突っ伏して、彼女の言葉にうなづくあたし。


 翌日あたしが学校で相談した相手は、友達―――もう親友と呼べそうな、唯一の子。


 山浦 アゲハ(ヤマウラ アゲハ)ちゃん、通称あーちゃんなど。普段一緒に帰っている子は、彼女。


 哀れみの込められた目を見て、あたしは再び机に視線を落とす。



「そうだよ…それだけのために待たせるなんて」



 彼女として見られてなんて、いないんじゃないか。不安なんて通り越してしまっている。


 ずっとずっと、悩み続けて。あの告白の日から。


 もやもやした感情を拭いきれないあたしに、あーちゃんは一言。



「それは確かに…王子ももう少し、考えてもいいと思う」



 賛同の言葉にあたしは、ついあーちゃんに抱きつきそうになる。


 王子とは、氷室君のこと。少しかっこよく言ってみれば、“通り名”だ。