『本当にひどい父親だわね』


洋子は心の中でそっと呟いた。


「洋子おねえちゃん、単三乾電池は、ないですか?」


ソワソワと落ち着かない様子の弥生がもう一度そう言って、ちらりと自分の部屋に目をやった。


弥生につられるように、洋子も隣の部屋をドア越しに覗き込む。


ギクリとした――。


『邪馬台国や大和朝廷成立当時の日本では、どれだけの民族や國があったのかというと……』


どうりでテレビの音がこんなにもハッキリと聞こえるはずである。


隣の部屋のドアは開いたまま、20センチ程の隙間を開けていた。