佐野 太郎が亡くなって、半年がたった。


ある晩、友愛荘103号室のドアが叩かれた。


林 洋子はいつものようにドアを開ける。


嬉しそうに微笑む弥生が、洋子の前に立っていた。


弥生の隣には母親と、もうひとり、弥生の母親を支えるように30代の男が立っていた。


「洋子おねえちゃん!お母さんが退院したの!!」


弾む弥生の声に、


「よかったわね、弥生ちゃん」


そう言って洋子は微笑んだ。