柔らかいハンカチを濡らしながら、洋子はさっきまで隣から聞こえていたテレビの音がもう聞こえてこないことに気が付いた。


「わかってくれたのかしら……?」


呟きながら洋子はホッと胸を撫で下ろす。


頭に来てつい隣に怒鳴ってしまったものの、それが弥生への暴力を余計にエスカレートさせたらどうしようかと今さらながら心配になっていた。


「まあ……こんなにいいハンカチを買ってあげるくらいの優しさがあの父親にもあったということか」


洋子は苦笑いをしながらそう言うと、弥生の待つ玄関へと向かって行った。