白い粉雪が舞っていた。


「あたし、寮に入るんだ。」


寒さでカタカタと揺れる歯で
一瞬彼女が何と言ったのか聞こえなかった。
俺は「え?」と聞き返すと、
彼女ははぁ、と溜め息を吐いて
俺を見つめる。


「あたし、寮に入るの!!」


嘘。

今までの寒さが、まるで何も感じなくなった。
冷たさも何もかも一瞬にして分からなくなる。
ただ俺の脳内では、
さっきの彼女の言葉がフリーズしていた。


”寮に入る”


つまり――?


「会えなく、なるってことか?」


今にも消え入りそうな俺の声。
彼女は小さく頷いた。
その横顔は、どこか悲しげだった。




――時は、数時間前に遡る。

今日はクリスマスイヴということで
町はイルミネーションで輝き、
幸せそうなカップルで溢れていた。

いつもクリスマスも共にパーティをしている
俺と永遠子だが、
今年は珍しく永遠子が「外に行こう」と言いだしたのだ。


――何故?

疑問に思い、首を傾げたが
拒否を許さない彼女の視線が
俺を寒くて嫌いな外へ出向かせることに。


しかしそんなラブラブの町中に行けるはずもなく。
俺たちは近所のコンビニで肉まんを買い、
暗い公園でクリスマスを過ごすことになった。


「クリスマスイヴなのに寂しいねぇ…俺ら。」
「…そーだね。」
「肉まん熱っ!」
「…うん。」


しばらく会話したところで、
俺は彼女の異変にようやく気がついた。
……何か今日、元気なくないか?

手袋をはめた手に、肉まんを握りしめている永遠子は
それを食べようとせず、
ただボー…っと眺めているだけ。


そんな彼女に何と声をかけていいものかも分からず
本当は嬉しいはずの二人きりのイヴは
どうも重苦しいものになってしまった。